追悼、ルディ・ヴァン・ゲルダー&名盤『Somethin’ Eles』

去る8/25にルディ・ヴァン・ゲルダーが死去しました。91歳でした。
今回はジャズということで、名レコーディング・エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーの業績を記したいと思います。
1・ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音について

 

ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音については、情報量が多くなったインターネット時代になってから、その録音方法等について誤った記述が散見されるようになりました。

超高度情報化社会がもたらした弊害の1つと言えるでしょう。

また、ネットに限らず、どういう訳か紙媒体においても彼の録音方法等について、90年代半ばから誤った記事を見るようになりました。
そうしたことから、故人の業績を正す意味で、記します。

先ず、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音について、ピアノの音が批判の対象になっています。

日本で、ジャズの名レコーディング・エンジニアとして名を馳せた某有名オーディオ評論家(今では引退同然ですが)も批判をしていました。
ヴァン・ゲルダーはピアノの録音に際して、ピアノの蓋にマイクを突っ込んでいたから音が増幅されエレキ・ピアノの音になる、と言う人もいますが、少々。
1950年代においてはスタジオにおいてミキシング・コンソールなどなかったことから、例えばピアノの音を別録りしたテープと他の楽器を録ったテープをミキサー・プリ・アンプを用いて、ミキシングしていました。

 

こうした場合、ピアノの音を距離を置いて録った場合、空気感が邪魔をし、ミキシングを終えた後でピアノの音がかなり遠くなってしまうのです。
そうしたことからヴァン・ゲルダーは、楽器の主役がサックスの場合、ピアノの音もサックスに近づける意図があったからこそ、敢えてピアノの蓋にマイクを突っ込み、音を増幅させていたのです。
ここで大事なことは、「ミキシング・コンソールがなかった」、と言うことです。

クラシック音楽においては、例えばオーケストラの音を1本のマイクで録り、ミキシングなど行いませんでした。

ジャズ録音の世界でも1本のマイクで録るエンジニアも多かったのです。
では、何故、ヴァン・ゲルダーは1本のマイクで音を録らなかったのか、と言うことになります。

 

ヴァン・ゲルダーの音について、楽器の主役が管楽器の場合、その音圧が強くて音が潰れている、と評されることがしばしばあります。

そう言う人は、ヴァン・ゲルダーの意図はおろか、ジャズという音楽そのものを理解していません。

ジャズという音楽は、ドラムとベースと言ったリズム・セクションを中心に楽曲が成立している音楽なのです。
そう。ヴァン・ゲルダーは、ドラムとベースの音の輪郭を鮮明に録りたいが為に、管楽器ギリギリの前までマイクを近づけたのです。

1959年までのレコーディング原始時代において、ドラムとベースの音の輪郭を鮮明に録るには、そうするしか方法がなかったのです。
「1本のマイクで録ったジャズのレコードでもドラムとベースの音が鮮明なものがあるじゃないか」、と言う人もおられると思います。

 

1本のマイクで録った場合には、エンジニアがミキサー・プリ・アンプで、ドラムとベースの音の位相を変えて音を鮮明にしてたのです。そうしたことをヴァン・ゲルダーは好みませんでした。
故に、1本のマイクで録ったエンジニアのレコードよりヴァン・ゲルダー録音の方が、ドラムとベースの音がナチュラルなのです。

このドラムとベースの音をナチュラルに録った、と言うことがヴァン・ゲルダーの最大の業績で、これが後のロックのレコーディングにおいても多大な影響を与えました。

 

また、ヴァン・ゲルダーのみならず1950年代のジャズのレコードでオーディオの調整の最初にもってくる人は先ずいないでしょう。何故なら、バス・ドラムの音が入っていないのですから。
2・ヴァン・ゲルダー録音の名盤、『Somethin’ Eles』

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筆者はヴァン・ゲルダーの功績を讃える意味でどのレコードにしようか、非常に迷ったのですが、まだまだ残暑が厳しい時期ですけれども、『Somethin’ Eles』にしました。

 

この『Somethin’ Eles』はマイルス・デイヴィスの稿で改めて記す可能性が高いのですけれども、『Somethin’ Eles』においてマイルス・デイヴィスに関し、微笑ましいことが感じられることから取り上げました。
「マイルス・デイヴィスは優秀なプロデューサー」である旨、筆者はマイルスの稿で記しましたが、そのプロデューサー、マイルスの手腕がこの『Somethin’ Eles』でも大発揮されています。

そして、ジャズという音楽の生命線がドラムとベースにあることを深く理解しているマイルスは、『Somethin’ Eles』のレコーディングに際して、ヴァン・ゲルダーなら安心して任せられる、という安心感からか、この時期の刃(やいば)の様なマイルスからは想像もできないほど、『Somethin’ Eles』ではリラックスしたプレイをし、それが『Somethin’ Eles』を大成功に導いた大きな理由であると筆者は考えています。
まあ、「枯葉」の時期には程遠いですが、そこはご勘弁下さい。

(文 葛西唯史)


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