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ジャズとクラシックの接近 ビル・エヴァンス特集

ジャズ・ピアノの歴史の中で、決定的なパラダイム・シフトを起こしたと感じるピアニストが3人います。ひとりはチャーリー・パーカーと共演してモダンなジャズ・ピアノのスタイルを完成させたバド・パウエル。ひとりはジャズとコンテンポラリー・ミュージックを衝突させてジャズを大きく進化させたセシル・テイラー。そしてもうひとりが、バド・パウエルの語法に印象派の和声カラーを持ち込むなど、クラシックが培ってきた音楽的なアドバンテージをジャズに付け加えたビル・エヴァンスです。ビル・エヴァンスの作り上げたピアノのスタイルは、現在まで続くジャズ・ピアノのメインストリームとなっていると感じる事すらあります。

今回は、モダン・ジャズ・ピアノの代名詞と言っても過言ではないビル・エヴァンスの音楽を、いくつかのレコードを通じて紹介してみたいと思います。

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■George Russell and His Orchestra / Jazz in the Space Age (Decca, 1960)

ミュージシャンとしてのビル・エヴァンスの能力の高さを証明する驚異の音楽で、モダン・ジャズが登場から10年たらずでここまでの芸術音楽に至ったことに驚かされます。ジョージ・ラッセルは「リディアン・クロマチック・コンセプト」で有名な理論家肌のコンポーザー/アレンジャーですが、それだけに彼の音楽を演奏するにはジャズの語彙だけでは賄いきれず、プレイヤー探しに苦労したのではないかと思います。実際のところ、ジョージ・ラッセルの作曲意図を反映しきれないばっぱーの演奏が数多くあるのですが、そうした状況で楽曲の要望に見事に答えたひとりが、ビル・エヴァンスでした。

アルバム冒頭の「Chromatic Universe part 1」から驚異の音楽が繰り広げられます。ポール・ブレイとビル・エヴァンスの2台ピアノが半音階でアドリブ演奏を交換するのですが、ビバップやハードバップに生きたジャズ系のピアニストにこれが演奏可能とは思えません。エヴァンスにクラシックの教養と演奏技量があったことは確かでしょう。ジャズ・ファンよりもミュージシャンが高く評価しそうな、モダン・ジャズの隠れた大名盤と思います。

 

■Bill Evans / New Jazz Conceptions (Riverside, 1956)

なぜ接点のなかったビル・エヴァンスにジョージ・ラッセルがオファーしたかを考えると、もしかするとこのレコードがきっかけだったのかも知れません。ビル・エヴァンス初のリーダー・アルバムですが、発売当初はモダン・ジャズ全盛期だというのに500枚しか売れなかったそうです。しかし音楽の内容は格段に高く、ビル・エヴァンスのリーダー・セッションでもっともすぐれたアルバムはこれではないかと思うほどの素晴らしさです。あきらかにドビュッシーの色彩が強いもの、以降のリーダー・アルバムでは聴かれることのなくなった精緻なコンポジション、それでいて同時代のバップ系のピアニストと比較しても優れて聴こえるドミナントの色彩を持ったアドリブ演奏など、以降のアルバムではなかなか聴くことのできない音楽的な高さを持つアルバムです。

 

■Miles Davis / Kind of Blue (Columbia, 1959)

モダン・ジャズといえど、ビバップからハード・バップまでの時代は長調か短調のどちらかで書かれた機能和声音楽の範囲にとどまっており、クラシックと比べると和声面で60年以上の遅れを感じます。しかしそのレベル差が一気に縮まるきっかけのひとつとなったものが、モード・ジャズだったのではないでしょうか。モード・ジャズも7音音階を使った音楽には変わりないのですが、それでもジャズのサウンド・パレットが格段に広がったことは確かです。

こうしたあらたな語法は、作編曲面ではいくらでも挑戦できますが、しかし演奏するとなると容易ではありません。このアルバムに収録されている「Blue in Green」は、モード・ジャズの金字塔と言っていいほどの見事な曲と演奏ですが、実際の和声処理はビル・エヴァンスが行ったと言われています。ワンコーラス10小節という特殊な構造といい、音楽面でモダン・ジャズを進化させてきた実際のミュージシャンが誰だったのかを考えさせられるレコードでもありました。

 

■Bill Evans / Waltz for Debby (Riverside, 1961)

デビュー・アルバムのセールスが散々だったためか、優れた音楽家であるビル・エヴァンスは、以降の活動をピアノ・トリオによるジャズというフレームの範囲に収めてしまいます。それでもクラシカルな教養は音のいたる所にあふれ、特にスコット・ラファロという優秀なコントラバス奏者を得た際は、プレイヤーの分業制が確立しているナイトクラブでのジャズ・セッションという場面でも見事な楽器間アンサンブルを聴かせるに至ります。スコット・ラファロを含むトリオによる演奏は多くのアルバムを生みましたが、このアルバムは「My Foolish Heart」や「Detour Ahead」でのリリシズムあふれる名演を含むこともあり、もっとも人気のある1枚ではないでしょうか。

 

■Bill Evans with Jeremy Steig / What’s New (Verve, 1969)

リリシズムに耳が行きがちなエヴァンスですが、フルートのジェレミー・スタイグとの激しいアドリブ演奏の応酬を聴くことが出来るこのアルバムを聴くと、ジャズ・ピアニストとしてのハードな演奏を行っても一流であったことが分かります。冒頭の「Straight, No Chaser」は、作曲者であるセロニアス・モンク自身の演奏を含め、このアルバムでの演奏が最高であたのではないかというほどの素晴らしさです。

 

■Bill Evans / Unknown Session (Riverside, 1962)

ビル・エヴァンスの見事なアレンジ能力が発揮された録音です。未発表音源集と思って聞き逃すには惜しいほどの音楽で、決してリードシートを見て一発で終わらせたような安易なセッションではなく、エヴァンスとジム・ホールという和声楽器2本にズート・シムズというウエストコーストのフロントマンを据えた5重奏が、見事なアンサンブルを奏でます。例えば、「Fudgesickle built for Four」では、ピアノとギターとサックスが3声のカノンを構成して始まるなど、アドリブとスコアの浸透が見事な室内楽ジャズが展開されます。

 

アーリータイム・ジャズのピアノを聴くと、古き良きアメリカ音楽のレイドバック感を感じます。チャーリー・パーカー登場とともに訪れたモダン・ジャズ創成期のジャズ・ピアノを聴くと、白熱した熱い音楽という印象が強いです。しかし今、ジャズ・ピアノと言って真っ先に思い浮かぶものは、私の場合はリリシズムにあふれる大人の音楽というイメージです。そのイメージの根源にあるものは、ピアノの前に伏せるように構え、独特のタッチで鍵盤をプレスしたビル・エヴァンスの音の事ではないでしょうか。つまり、エヴァンス以降のジャズ・ピアニストは、多かれ少なかれエヴァンスの影響を受け、あの音をどこかで意識していたのかも知れません。

 

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