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ウェイン・ショーター 60年代ジャズを映し出すレコード|大阪で高価買取してくれるの?
50年代はモダン・ジャズ黄金時代。しかし60年代に入るとビートルズのデビューをきっかけにロックが大爆発して、ジャズは押されてしまいます。ところがモダン・ジャズ黄金時代を通過した後となれば音楽面や演奏面はとうぜん進化していたわけで、60年代はジャズの歴史の中でもっとも高度な音楽を実現した時期でもあったのではないでしょうか。
そんな60年代を駆け抜けたジャズのトップ・アスリートのひとりが、サックス奏者のウェイン・ショーターでした。そんなショーターの60年代は、ジャズが音楽的な高みへと登り詰めていったその過程を鏡写しにしたような軌跡をたどりました。アルバム紹介とともに、高く売れるレコードはどれ?など、いろいろ書きました。
●ハードバップを進化させる新風
Art Blakey & The Jazz Messengers / Caravan (Riverside, 1962)
Art Blakey & The Jazz Messengers / Free For All (Blue Note, 1965)
ウェイン・ショーターがジャズの世界で注目を集めたのは、ハードバップの名楽団アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズへの参加からでした。そのころはモード・ジャズやフリー・ジャズが勢いを増していた時期で、50年代中頃より一世を風靡したハードバップは時代遅れになりつつありました。
弱冠26歳だったショーターは、加入するとあっという間にバンドのブラス・アレンジを担当、作曲も多く手がけてバンドに新風を吹き込みます。メッセンジャーズらしいハードバップの王道スタイルの中に、モードや和音での新しいビルドを紛れ込ませ、ショーター在籍時のメッセンジャーズ独特のポスト・ハードバップ・スタイルを築き上げました。バップ系のジャズが好きな方は、この時期のショーターこそ最高という人もいます。
この時期のおすすめレコードは、62年録音『Caravan』と、64年録音『Free For All』。作編曲で大きな仕事をしていたショーターが、ハードバップの見せ場となるアドリブ・パートでも先頭を飾るようになったのが前者です。バップ系のジャズは戦隊ヒーローの見栄と同じで、各上から先に名乗るのです。後者は、個人的にはジャズ・メッセンジャーズ最高傑作と思っています(異論は認めます)!
●「Speak No Evil」への道
Wayne Shorter / Night Dreamer (Blue Note, 1964)
Wayne Shorter / JuJu (Blue Note, 1965)
Wayne Shorter / Speak No Evil (Blue Note, 1966)
メッセンジャーズ脱退と入れ替わるように、ショーターはサイドマンとしてマイルス・デイヴィスのバンドへ参加。同時にジャズの名門ブルーノート・レコードからリーダー・アルバムを発表するようになりました。マイルスのバンドの音楽とショーターのリーダー・アルバムはかなり近い事をやっていて、この頃のショーターの方向性がよく分かります。
発表年こそずらされましたが、ショーターは1964年に録音セッションを重ねて3つのアルバムを完成させました。一貫しているのは、楽式はハードバップであり和声はモードという点と、ジョン・コルトレーンのアドリブ・スタイルの探求が見られる点です。この音楽性はメンバーの選定にもあらわれていて、ジョン・コルトレーン黄金のカルテットのメンバーだったマッコイ・タイナー(p) やエルヴィン・ジョーンズ(dr)、それにモード・ジャズの急先鋒だったハービー・ハンコック(p) などが参加していました。
伝統的なジャズのソングフォームと新しいサウンドを持ち、同時にそれに対応するためのアドリブの探求をした64年の音楽は1作ごとに徐々に進化し、ウェイン・ショーターの代表作という評判も高い『Speak No Evil』へとたどり着きました。
●帝王と並走!新主流派ジャズの完成形
Miles Davis / At Plugged Nickel, Chicago (CBS/Sony, 1976)
Wayne Shorter / The All Seeing Eye (Blue Note, 1966)
きっとみんな思ってるけど口に出さないだけ。忖度したってしょうがない、モード・ジャズ系の音楽に取り組んできた64年までのウェイン・ショーターは、アドリブ演奏の面で他のトップ・プレーヤーとは300m 以上離された第2集団といった印象でした。アドリブを音楽的に組み立てられないのですよね…。ところが65年にブレイク・スルーが起こります。論より証拠、ショーターの恐るべきアドリブ演奏が記録された2枚のレコードを紹介します。
『Miles Davis / At Plugged Nickel, Chicago』は、泣く子も黙る第2次マイルス・デイヴィス黄金のクインテット時代で、ショーターのみならず帝王マイルスもこの演奏がキャリア・ハイでしょう。このとんでもない演奏を埋もれされる事なく発表したのは日本のCBSソニーのチーム。あっぱれです。
リーダー・アルバム『The All Seeing Eye』は、アコースティック期ショーターの最高傑作と私は思っています。楽曲中に展開部が挟み込まれ、5管が生み出す浮遊感あふれる独創的な和音もビルドも見事。曲中でリズムもテンポも変わっていく変幻自在さは、同年のマイルス・バンドに共通する自由自在さです。
何がブレイク・スルーのきっかけとなったのでしょうか。私の勝手な推測ですが、マイルスのアドリブから学んだのではないでしょうか。ハードバップからモード期のマイルスのアドリブって、実はソナタ形式のように主題や展開部がきっちりとして作曲的な構造美を持っているんですよね。
ちなみに、『The All Seeing Eye』のオリジナルUS盤は、ステレオ盤もモノ盤もとんでもないプレミアがついています。特にモノ盤レコードは10万円を超える値をつけた事もある高価買取アイテムです。ショーターのブルーノート盤はいずれもプレミアもののレコードです。
●ポスト・モードとポスト・フリー 60年代ジャズの到達点を記録したレコード群
Wayne Shorter / Super Nova (1969)
Wayne Shorter / Moto Grosso Feio (April & Aug 70)
Wayne Shorter / Odyssey of Iska (70)
60年代後半に入るとビートルズのデビューしたロックに押され、良くも悪くもジャズはエレクトリックへの意識が強くなり、ジャズ自体もフリー・ジャズを経験。そんな時期にウェイン・ショーターは信じがたい高みへと登りつめたレコードを3作発表しました。発表年はずらされたものの録音はすべて69~70年、ここに神った音楽が誕生します。
3作の共通項は、フリー色が強いながらもモードを通過した演奏である事、作曲部分を持つ事、ボサノヴァへの意識、この3つでしょうか。「Speak No Evil」「The All Seeing Eye」「Odyssey Of Iska」など、ショーターは厨二病まる出しのおどろおどろしいタイトルをよくつけますが、この3作はタイトルだけでなく音楽までおどろおどろしいです。しかしその音楽は高度かつ迫力がすさまじいです。これを体験してしまえば、のちに参加した天気予報バンドの音楽など子供だましにしか聴こえない…かも知れません。
区別するほどの差ではないかも知れませんが、敢えて差を言うなら、フリーとボッサが融合せずに分けて演奏されたのが『Super Nova』、両者が見事に融合したのが『Odyssey of Iska』と『Moto Grosso Feio』。人気は『Super Nova』が高いですが、他の2作も音楽円では引けを取らないどころかそれ以上。敢えて推薦するなら、私なら『Odyssey of Iska』がトップ、次点で『Moto Grosso Feio』。ぜひ聴いて欲しい音楽です。
音盤としての希少価値で言うと、『Odyssey of Iska』はCDですら復刻が遅れ、かつ復刻回数が少ない事から、高額化しやすいです。ましてLPレコードともなれば、かなりのプレミアがついています。
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