レコードを感動の音で!自分の趣味に合ったスピーカーの形状とは?|誠実買取のonkikan.com

聴きたい音楽が多すぎた事もあって、音楽を夢中で聴いていた若い頃、ハードはミニ・コンポで済ませて少額に抑え、ソフトであるレコードの方に比重を置きたいと思っていました。ところがある時、よいオーディオ装置でレコードを聴く機会に恵まれ、そのあまりの音の良さに考えが変わりました。

きっかけになったレコードはジャズの名盤『カインド・オブ・ブルー』でした。ジェームス・コブのブラシで捌かれるライド・シンバルの分厚く美しいサウンド、ピチカート演奏のコントラバスの奥行き、そのすべてに驚きました。どれもミニ・コンポで聴いていた時には気づかなかった事だらけで、優秀なアンプとスピーカーなしで鳴らし切れるものではなかったと思います。レコードにはこれほど豊かな音が記録されていたのに、それまでは音の豊かな表情が削げ落ちたものしか聴いていなかったのだと思わされました。

オーディオにとって、アンプ、スピーカー、レコード・カートリッジ、この3つは優先して強化したいポイント。ましてアンプとスピーカーは良いものを買ってしまえば一生ものです。しかしスピーカーは単なる良し悪しではなく、形状、構造、材質など、方式自体が多種多様なため、購入時には迷ってしまいますよね。

というわけで、今回は、私的3大オーディオ重要ポイントのひとつであるスピーカーに関するお話をさせていただこうと思います。

■電気音響変換別に見た種類

大雑把に言うと、マイクとスピーカーは似た原理を持っています。マイクが音響を電気信号に変えるのに対し、スピーカーはその逆。ですから、スピーカーの電気音響変換の方式もマイクと同じように、ダイナミック型、コンデンサー型、リボン型などがあります。ただ、ダイナミック型が低音再生や過大入力などのショックに強いため、現在のスピーカーのほとんどはダイナミック型です。

■駆動方法別スピーカー・ユニットの種類

スピーカーという言葉は大きくふたつの意味で使われます。ひとつは、あのブルブルと震える丸い部分だけを指す場合。もうひとつは、箱も含めたすべてを指す場合です。両者を区別する場合、前者をスピーカー・ユニット(またはドライバー)、後者をスピーカー・システムと呼びます。

スピーカー・ユニットはいくつかの観点から分類できます。そのひとつはユニットのどこを動かすかで区別する方法です。ユニットの中心に電気信号を与えて振動版を揺らす中心駆動、周辺を揺らす周辺駆動、このふたつが中心です。他に全面駆動、節駆動というものもありますが、あまり使われる事がないため、今回は説明を省きます。

駆動方式の差はスピーカーの形状際になって現れます。中心駆動がコーン型、周辺駆動がドーム型の形状となります。見分け方としては、コーン型は外から見ると内側に陥没した形、ドーム型は中心部分が大きくドーム状にせり出した形になります。

どこを振動させるかによってどのような特徴が出てくるのか、その為にはコーンの形状をどのようにするとどういう特性が出てくるのか…という所もとても面白い話なのですが、こういう難しい話は今回は割愛。それぞれの長所と弱点に話を絞ると、コーン型は低域や中域の周波数特性に優れますが、高域が暴れやすくなります。一方のドーム型は振動版が小さいために低音に弱いものの、高域の特性に優れています。

■振動版の材料の種類

振動版は実際に震えて空気を振動させて直接の発音源となるため、その材質は音の質感に直接影響します。そして、振動版の材質にも種類があります。大きく分けると、紙系、高分子系、金属系、セラミックス系、これらを複合させたもの、などがあります。

振動版の主役は、昔は紙系でした。レコーディング・スタジオのリファレンス・モニターの座を占めたヤマハ10Mなどはその代表例です。紙系振動版のメリットは、材質の色が少ない事、安価である事など。一方のデメリットは、あくまで私見ですが紙の音がする事…音が薄っぺらいのですよね。

高分子系の材料の代表格はポリプロピレン(PP)です。メリットは汎用樹脂としては比重が最も小さく、かつ強度が高い点にあります。いかにも神の弱点を補った見事な素材と思えそうなものですが、比弾性率が低く周波数特性が平坦化されてしまうというデメリットがあります。これを改善するため、グラファイトなど色々なものを加えた複合材が開発されるようになりました。

金属やセラミックの長所は頑丈である事、弱点は重い事、金属的な材質の音がどうしても防ぎきれない点などです。しかし、JBL の金属製ツイーターは美しい音をしていた印象があるので、メーカーの努力で色々と改善されているのでしょうね。やはりここは聴き比べて自分で判断したいところです。

■再生帯域別スピーカー・ユニットの種類

ユニットは駆動方法だけではなく、ユニットが受け持つ再生帯域別に分類する事も出来ます。帯域というのは音の高さの範囲の事。人間の聴覚はおよそ15Hz(ヘルツ)という低音から、20kHz(キロヘルツ)という高温まで聴く事が出来ますが、これのどこをユニットに受け持たせるかという事です。

ひとつのユニットにすべての帯域を受け持たせるものを、フルレンジ・スピーカーといいます。一方、帯域別に分担させて使うユニットも存在します。これはいくつに分割して分担させるかにもよりますが、主流としては2または3に分割する事が多いです。その場合、低域担当をウーファー、中域用をスコーカー、高域用をツイーターと呼びます。

■エンクロージャー(キャビネット)の種類

これまではドライバーの話をしていましたが、ドライバーだけを振動させても、その表と裏で空気振動が相殺されてしまうため、音の出力が弱くなってしまいます。そこで、最低でもドライバーの前面と後面を仕切る板(バッフル版)が必要になります。さらに、ドライバーの裏面を箱で囲った上に吸音材で吸収してしまう仕切り箱(エンクロージャー)が考案されました。スピーカーの箱の事ですね。代表的なエンクロージャーは、密閉型、バスレフ型、ホーン型の3つに分ける事が出来ます。

密閉型は、エンクロージャーを完全に囲った形になっています。長所はユニットの最低共振周波数周辺からなだらかに低音が減衰していく事(これはすっきりしないという短所にもなりえます)。短所は軽い振動版を使うと微小な振動が抑えられて詰まった音がしてしまう事です。もし良いスピーカーを買うのであれば、個人的にはこの方式がおすすめです。すっきりした感覚は落ちますが、音の深みは抜群です。奥行きを表現したプロフェショナルな録音物の再生には密閉型が不可欠とすら感じます。

バスレフ型は、エンクロージャーに穴をあけ、ヘルムホルツ共振という現象を起こして低音域を増幅する方法です。長所は音のつまった感じが少ない事。短所は、すっきりして奥行き感が密閉型ほどには得られない事、低域が密閉型尿に滑らかに減衰せず、カットオフ周波数以下で急激にロールオフする事です(これは低音がもたつかないという長所にもなりえます)。密閉型で良い音を鳴らすにはエンクロージャーががっちりしている必要がありますが、バスレフはそこまでの必要がありません。ですから、あまり予算をかけずによい音を鳴らしたい、部屋が狭くて大きなスピーカーが置けないという場合などは、間違いなくバスレフがおすすめです。

ホーン型は、エンクロージャーの一部をホーン型にしたものです。狙いはメガホンと同じで、音を効率よく飛ばすためにあります。長所はまさにその点、一方の弱点は飛ぶ方向が定められるためにリスニング・ポイントが制限されます。私は久石譲さん所有スタジオの3階にあった某レコーディング・スタジオのラージ・スピーカーでホーンを体験しましたが、その音の素晴らしさに驚いたことがあります。ただし、現在の家庭用スピーカーにはあまり採用されていない方式ですので、個人ユースとしては気にする事はないかも知れません。

■スピーカー・システムの種類

さて、これらの要素を組み合わせて、スピーカー・システムが組まれる事になります。フルレンジ・スピーカーとバスレフとか、マルチウェイ(2ウェイや3ウェイなど)と密閉型といった具合です。

フルレンジ・スピーカーの長所は、帯域別に複数のユニットを使う時に生じる音の出どころの違いによる位相干渉や、帯域別に受け持った時のクロスオーバーの不自然さを持たない事です。位相干渉はイメージしにくいかも知れませんが、定位が明確で干渉がない音の整除された美しさは、体験すると驚かれると思います。短所は、ひとつのユニットで低音から高温までを鳴らす事は非常に難しいという点です。特に高域特性はどうしても犠牲になります。

マルチウェイの長所は、周波数特性をフラットに近づけることができる事で、特にツイーター使用による広域の伸びは大きなメリットです。短所は音の出どころの違いによる位相やのクロスオーバーの干渉です。ユニットがたくさんついている方が有難い気がしてしまいますが、この点だけでいえば3ウェイや4ウェイより2ウェイの方が優れているといえます。それでも3ウェイを選ぶ利点は、ウーファーの口径を大きくすることができる事で、これで低音を鳴らす事が出来るようになります。

フルレンジとマルチウェイの良いところ取りをしたスピーカーに、同軸スピーカーというものがあります。これはウーファーのセンターにツイーターを取り付ける形状となっています。良い事だらけの方式に思えますが、いざ聴いてみるとさすがと思いつつ、クロスオーバーが奇麗に繋がって感じられなかった短所も感じました。Tannoy が作った同軸スピーカーは名機として知られています。

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■パッシヴ・スピーカーとアクティヴ・スピーカー

スピーカーだけを取り出して書いてきましたが、オーディオで最重要ともいえるポイントは、アンプとスピーカーの相性だったりします。マッキントッシュとB&Wを組み合わせたからと言って良い音になるとは限らないのですよね。そんなところに登場したのが、アンプ内蔵のスピーカーで、これをアクティヴ・スピーカーと呼びます。一方、従来の別途アンプを使うスピーカーはパッシヴ・スピーカーと呼びます。

アクティヴ・スピーカーの草分け的な存在となったのがGenelec で、プロのレコーディング・スタジオのラージ・スピーカーでもGenelec を導入している所は少なくありません。私が人生で体験したもっともよい音のスタジオは東京の世田谷にあったスタジオですが(残念ながら現存せず)、そのスピーカーはGenelec 1035Bでした。また私は、外録の場合は現地のアンプによる音の変化をさせないため、Genelec の小型スピーカーを持っていくことが多いです。

■さいごに

どのスピーカーも、その長所と短所を踏まえ、それを克服すべくメーカーが手を入れて完成させていますので、一概に「密閉型だから深みがある半面音が詰まる」「バスレフだから音像が奇麗だけど深みがない」というわけではありません。ただ、大元に傾向がある事はたしかです。奥行きを作らずすっきりさせたAORを密閉型で聴いても、深みは重さに聴こえてしまうかもしれませんし、見事なワンポイント・ステレオで録音された管弦楽曲をバスレフ3ウェイで聴いても、なんだか奥行きが薄く感じられてしまうかもしれません。これらの要素を目安にある程度の検討をつけたあとは、オーディオ店に自分のリファレンスのレコードを持っていって掛けてもらい、音を確認して、良いスピーカーを選べると良いですね。最後は自分の耳で確かめるに限ります。

 


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