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DJ高潮のPrestige(プレスティッジ・レコード)列伝 file Vol.2

すっかり冷え込む季節になりましたね。

私事ですが12月にレコードを探しに北陸にいってきます。

自分が住んでいる場所以外へ目的を確りもって足を運ぶと思わぬ出会いがあるのです。

目的と言ってもブラジルのレコードを主に探しに行くのですが、やっぱり自分の全く知らない盤に初めて針を落とす時のワクワクって堪りませんね。

『えーなんなんですかこれ!』

『これはあれよ…』

そんな会話から自分が全く聴けなかった音楽の世界が広がっていく…

今回もどんな新しい音楽に出会えるのかと今から待ち遠しいです。

個人的な近況報告になってしましましたが、僕の好きなアルトサックスプレイヤー、リー・コニッツも自分の慣れ親しんだアメリカから活動の場所をヨーロッパに移し、様々な出会いを重ね、ヨーロッパ圏にジャズプレイヤーに影響を与え続けたジャズ界の渡り鳥でした。

さて今回はリー・コニッツについて少し掘り下げてみようと思っています。

友人とお酒の席での笑い話なのですが…

『リー・コニッツってさ。アルバム多すぎて追いきれないんよなー。ほんとジャズ界のフランク・ザッパだわ。』

僕はこの二人すごく似ていると思っています。ユーモアセンスがあったザッパに対して、堅物のコニッツ…ただし今日よりも明日と自分の音楽の可能性に対して追求し続けた点は同じ、また多作でどこから手をつけてよいのか?というところも似ているんですよね。

大まかに区分けすると、クール・ジャズの旗手として活動していた初期、活躍の場(生活の場)をヨーロッパに移し、マンゲルドルフ、アッティラ・ゾラーなどの現地のミュージシャンと数々の名演を残していた中期、アメリカに戻り暖かいサックスの音色も使うようになった現在までの後期。

今回紹介する1枚は彼の初期の初期、レニー・トリスターノの門下生時代に録音された1枚であり、ワインストック主催のPrestigeの最初の録音でもあります。

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Prestige立ち上げ当時ワインストックが新しいジャズ・レーベルの旗揚げとして目を付けたのがストイックな姿勢、黒人ミュージシャンのバップとは一風変わった作風が持ち味のレニー・トリスターノでした。長いブロウや繰り返されるフレーズを駆使し、聴くものを熱くさせる黒人ハードバップとは対照的にジャズ理論を演奏の根底に置き、内向的で熱くなることなく常に冷静、冷たい印象を持たせる『クール』と呼ばれるジャズです。

そんな最初の録音でしたが、終了後トリスターノは『今回の演奏内容は芳しくなかったので発売はするな。したら一生呪うぞ!』とワインストックを脅したといいます。

さあ困った…レニー・トリスターノ名義で発売するワケにはいかないし…

パッケージングの目玉として白羽の矢が立ったのが若くしてトリスターノの音楽性に共鳴していた門下生リー・コニッツでした。

結果はそこそこヒットし、ワインストックもご満悦。その後のレーベル存続につながっていく訳です。

ではパーソナルを調べていきましょう。

今作は4日に渡って録音された演奏で構築されています。

まず1949年1月11日の録音から…〈A-1,A-2,A-3,A-4〉

ピアノはもちろんレニー・トリスターノ。アルトサックスにトリスターノ一派のリー・コニッツ、同じくテナー・サックスに初期コニッツの盟友でありトリスターノ一派のウォーン・マーシュ、ギターにビリー・バウアー、ベースにアーノルド・フィッシュキンド、ドラムスは同時様々なセッションに呼ばれていたシェリー・マンというメンバー。

この日の録音で印象的な楽曲はやはり冒頭の”Subconscious-Lee”

チャーリー・パーカーやジャッキー・マクリーンとは全く違う冷たい質感のバップを聴くことが出来ます。メロディーラインの吹き終わりに強調されるスタッカートなどキレキレの演奏ですね。

個人的にはA-4の”Retrospection”も好きなナンバーです。

とろけるように柔らかい音質のバラードで、曲名通り1940年代の名作映画のワンシーンで使われていそうなレトロを感じさせる名曲になっています。

次は1950年4月7日の録音…〈A-5,A-6,B-5,B-6〉

こちらの演奏からはA-5”Ice Cream Konitz”は是非A-1と聴き比べてもらいたい。

曲のタイプはA-1と同じくクールなバップ。しかし聴き比べると各楽器が今にもちぎれてしまいそうな糸を引き合い、ギリギリの張力で貼られた緊張感がある演奏の前者に対して、後者は管楽器がリードしながらどこかリラックスした印象を受けると思います。それもそのはず今回の録音はピアノのトリスターノから弟子のサル・モスカに変わっており、ドラムスもシェリー・マンからジェフ・モートンに変わっています。コニッツ、マーシュの成長を楽しむのも一興、またトリスターノの凄さを改めて感じるのも楽しいので是非A-1の後にすぐA-5を聴いてもらいたい。アルバム最後のB-6”Rebecca”もコニッツとバウアーのデュオのバラードで素晴らしい。改めてバウアーの湿り気のあるギターに惹かれる。

最後は1949年6月28日、9月27日の録音…〈B-1,B-2,B-3,B-4〉

この二日間は個人的な今作のハイライト。B-1の”Marshmallow”が素晴らしい名演です。

どうしてもピアノを聴き比べるとトリスターノに軍配はあがるのだけれども、この一曲の聴きどころはコニッツとマーシュの掛け合い。当時ライブを見たジャズファンは二人のユニゾン演奏を聴いた時まるで一本の管楽器の演奏の様に聴こえたそうで、二人の相性は抜群。その後二人の名作が産まれるんですよね。

改めて聴きなしたプレスティッジの名作Lee Konitzの”Subconscious-Lee”

ポール・モチアンのエレクトリックビバップバンドが耕した畑から産み出された現代ジャズが好きな方に是非改めて聴いてもらいたい1枚です。今のニューヨーカー達が聴くジャズの原型は実は新しいものではなくすでに1950年には出来上がっていたと感じさせれくれます。

さあリー・コニッツの今後のヨーロッパ珍道中のお話もしたいところですが、それはプレスティッジの範疇外のお話…是非皆さんが自らページを開いてください。

最後に私事ですが、高潮の珍道中もコニッツの様に実りのある遠征になるよう確り準備をしておきたいものです。

では次回もお楽しみにー

 

ライター:DJ高潮

 


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