思いでのオーディオ機器(2)/レイ・オーディオ、JBL4350、JBL4312

今回もオーディオ・システムにおいて、最大の音の決めてであるスピーカーに的を絞ってご紹介

したいと思います。

 

ベテランのオーディオ愛好家の方には懐かしんでほしく思いますし、お若いオーディオ入門者の方には

「ふ~ん」と思って頂ければ幸いです。

 

  1. 世界に衝撃を与えた国産スピーカーの雄、レイ・オーディオ、RM-6V&RM-7V

 

 

 

パイオニアのTADに所属していたスピーカー・エンジニアの木下正三氏が、JBL社から招聘された

バート・ロカンシー(375や075等々を開発した人物)と共に共同開発に当たって出来上がった高帯域の

コンプレッション・ドライバーが、4001。

 

この4001は40cm口径の1601ウーファーと共に、ロック・バンド、イーグルスのライブでのモニター・

スピーカーに使用され、それまでにない高音質で世界中のド肝を抜きました。

 

その後、木下正三氏がパイオニアから独立をして、レイ・オーディオを興したのが1984年。

 

そのレイ・オーディオから発売されたRM-6VとRM-7Vが世界中のレコーディング・スタジオに

モニター・スピーカーとして採用され、世界中を席巻しました。

世界中で、「キノシタ・モニター」として賞賛を集めました。

国産スピーカーが事実上、初めて世界に勝利した瞬間でした。

 

多分、ですが、バーチカル・ツイン(仮想同軸)スピーカーは、このRM-6VとRM-7Vが起源だった

と思います。

 

日本では、ジャズ愛好家がRM-6VやRM-7Vをぶち込んで音楽鑑賞を行いました。

 

筆者は、1987年に、或るジャズ・オーディオ愛好家のお宅で、初めてRM-6Vを聴く機会に恵まれた

のですが、どうしても日本人的な几帳面さが音に反映されているのが難としながらも、その音に驚愕

したものです。

 

RM-6VやRM-7Vはバーチカル・ツインながら、後に出た同方式によるJBLのS9500より、音のレンジが

広いことも特筆すべきことと思います。

 

ただ、問題は、1601ウーファーの振幅が重く、かなりのドライブ能力を有したパワー・アンプを用いないと

巧く鳴ってくれないことです。

そうしたことから、フランス(だったと記憶しています)のJDFというメーカーがRM-6V、RM-7V専用

のパワー・アンプを作っていました。

 

されど、マルチ・アンプ駆動したRM-6V、RM-7Vは、ウーファー用にハイ・パワーなアンプを用いれば

見事に鳴ってくれ、筆者は、3年前にマルチ・アンプ駆動したRM-6Vを聴きました。

良い音でした。ジャズが、ガンガン鳴っていました。

 

  1. 早すぎたモニター・スピーカー、JBL・4350

 

161124JBL4350

 

では、1970年代に入っていち早くスタジオ・モニター・スピーカーに参入したJBLは? となり

ますが、大型スピーカーにおいて苦戦を強いられました。

 

JBLは1973年に4350を出したのですが、4350はスタジオの壁に埋め込むことが前提に設計されて

おったものの、まだ検聴用のモニター・スピーカーが壁に埋め込まれることは稀でした。

そうしたことから、後で出た4343もですが、4350はそれほどスタジオに導入されませんでした。

因みに、(1)のRM-6V、RM-7Vは、そのほとんどがスタジオで壁に埋め込まれています。

 

時代が早すぎたのです、4350は。

 

また、4350はマルチ・アンプ駆動(アクティブ・バイ・アンプ駆動)が前提であることから、

それを面倒くさがるスタジオ関係者も多く、プロの現場を席捲することはありませんでした。

なまけ者が多いようです、欧米人は。

 

しかし、日本では、4350を家庭にぶち込み音楽鑑賞を行うオーディオ愛好家が多く、アクティブ・

バイ・アンプ駆動で鳴らすことから音の鮮度が高く、未だに4350は大人気を保っています。

後継機種の4355と共に。

 

筆者は何度も4350を聴く機会に恵まれましたが、その音のリアリティは、例えマルチ・アンプ駆動を

したRM-6V、RM-7Vに負けておらず、4350を4ウェイ・マルチ・アンプ駆動すれば、その音はRM-6V、

RM-7Vを凌駕します。

 

とんでもないモンスター・スピーカーです、4350は。

 

  1. 日本で根強い人気を誇る大ロング・セラー、JBL・4312

 

161124JBL4312

 

次は、JBLの4312です。

 

4312の前身である4311から数えれば、その歴史は40年を超える息の長いスピーカー。

 

筆者は、1983年に4312の音を聴いて、そのカラッとした音と音のレンジの広さを気に入り、

社会人になったら先ずは4312を導入しようと思いました。

 

そして筆者は、晴れて1992年、社会人3年目にして4312XPを導入しました。

 

今、思い起こしても4312XPを使用していた8年間は素晴らしいものがありました。

 

ブックシェルフのスピーカーですから動かすことが容易ですので、両側の壁との位置、背後の壁との

位置による音の違いの実験をよくさせてくれ、4312XPは筆者を一人前のオーディオ愛好家に育て上げて

くれたのです。

 

では、何故、4312は、そんなにロング・セラーなのか?

答えは、良いスピーカーで需要があるからです。

(文 葛西唯史)

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