音機館ジャズ|マイルス・デイヴィスを巡る旅路(2)~1955年

さて、今回は、1955年のマイルス・デイヴィスについて取り上げてみたいと思います。
この1955年の2作品は、過小評価されがちですが、筆者はマイルスにとって、かなり重要な作品と位置づけています。

 

1・『Miles~The New Miles Davis Quintet』

 

このアルバムにおいて、重要なことは、やはりサックスにジョン・コルトレーン、ピアノにレッド・ガーランド、
ベースにポール・チェンバース、ドラムスにフィリー・ジョー・ジョーンズを擁して、黄金のクインテットを築き上げたことでしょう。
ただ、マイルスのファンの間で、(だらけた作品)とも捉えられがちです。
しかし、マラソン・セッションは後述しますが、マラソン・セッションでもそうですけれども、
マイルス・デイヴィスという人/プロデューサーは、やっつけ仕事をしない人なのです。
筆者は、上記の布陣/メンバーを敷いたマイルスが、(このメンバーで何ができるのか)という思いを抱き、
それを実践した作品と捉えています。
だからこそ、全体的に、「リラックスした感じ」でのプレイが繰り広げられ、マイルスや各メンバーが
互いの様子をうかがっているように感じられます。
プロデューサー、マイルス・デイヴィスにしてみれば、(おい、おい。そんなに固くなるなよ。リラックスして行こうぜ)、
と、各メンバーに声をかけ、各メンバーは何とか肩の力を抜いて、マイルスの指示に従ってプレイをした様子が十分に伝わってきます。
それでもマイルスはA面3曲目の「How Am I to Know?」とB面1曲目の「S’posin」で全メンバーに疾走をさせ、
緊張感を強いたプレイを行わせています。
そして、マイルスは上記の2曲とリラックスした曲とで、(こいつぁー、すげー、クインテットになるぜ)、
と確信をもったのではないでしょうか。
この後、マイルスはこのクインテットでCBSと契約をしますが、そこで生まれたのが『Round About Midnight』ですけれど、
本作はその布石となる作品です。
ともかく、筆者としては、ジャズ初心者の方には、リラックスした楽しい楽曲群に身を委ねていただきたいと思います。

2・『Miles~The New Miles Davis Quintet』の意義

上記のことと重複しますが、マイルスが黄金のクインテットを築き上げ、プロデューサー、マイルスが
このクインテットの可能性を探究し、そしてその結果が素晴らしいものであると同時に、マイルスが自信をもって
『Round About Midnight』のレコーディングに臨むことが可能となった作品であるということです。

3・『Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet』

 

本作では意外なことに、再度、ミルト・ジャクソンとの共演を行っています。
これに関してはいろいろ書かれていますが、『Miles~The New Miles Davis Quintet』で組み上げた黄金のクインテットのメンバーたちに、
まだ他の仕事があったことから、メンバーたちに、その仕事を消化させる為に手があいたマイルスが、
『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』までのミルト・ジャクソンとのプレイを思い出し、
ミルト・ジャクソンとの完成型を試みた作品と言えるでしょう。
ともかく筆者は、初めてこの『Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet』を聴いた時の衝撃を忘れられません。
トランペット、サックスの管楽器とビブラフォンが織りなす音の世界に引きずりこまれました。
また、この音の世界は、マイルス、ミルト、ジャッキー・マクリーン(アルト・サックス)だけではなく、
レイ・ブラウンのピアノ、パーシー・ヒースのベース、アート・テイラーのドラムスがあってこそ、
表出させることができた音楽世界だと思います。
言葉は悪いかも知れませんが、急造のメンバー(寄せ集めのメンバー)だったのにもかかわらず、
彼らのプレイが冴えに冴えている大きな理由は、マイルスのプロデューサーとしての才能が大きく開花していたからでしょう。
多分にリラックスした作品が多く、その緊張感と言った点では『Miles Davis and The Modern Jazz Giants』に軍配を上げざるを得ません。
しかし、本作ではマイルスもミルトも、伸び伸びと自由闊達にプレイをしていて、とても楽しいアルバムに仕上がっています。
ですが、本作がミルト・ジャクソンとの完成型になったのかと言えば、少々、怪しいことは否めません。
それでもマイルスとミルトが、リラックスをしながら、ジャズという音楽を楽しみながら、新たな作品をつくろうと
意欲的な様子が十分に伝わってくる佳作です。
ジャズ初心者の方には、本作でもリラックスをしながら音楽に身を委ねて聴いていただきたいと思います。

4・『Miles Davis and Milt Jackson Quintet/Sextet』の意義

これも上記のことと重複しますが、急造のメンバー(寄せ集めのメンバー)だったのにもかかわらず、
彼らに非常に冴えたプレイをさせるマイルス・デイヴィスのプロデューサーしての成長ぶりをかいま見させる作品だということです。
このマイルスのプロデューサーとしての成長が、次の『Round About Midnight』の大成功とマラソン・セッションの充実ぶりを約束してくれたのですから。

(文 葛西唯史)


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